日記:「エジプト十字架の秘密」

な、長かった。

初期エラリー・クイーンの傑作群、国名シリーズの5作目です。私はまだ「フランス白粉」とこれしか読んでいないので2番目に読んだことになります。

日記:「フランス白粉の秘密」 - しゆろぐ

国名シリーズの中では人気の作品だったけど、いかんせん長い。角川文庫の新訳版はやたら文字が大きくて、フランス白粉より100ぺージくらい多いだけだから、そんな量でもないと思うけど、かなり長く感じた。

フランス白粉が「数々との証拠との対話」によってじりじりと真実を明かしていく作品であるのに対し、エジプト十字架が「たった一つの証拠の爆発」によってすべてが明らかになる作品だからかもしれない。それ以外の情報の描写が長い。いや、もちろん、途中でロジカルな推理描写やスリリングな捜査の描写はあるし、たった一つの証拠というだけではないけれど。

個人的に面白かったのは、クイーンが裁判で自信満々にタイトルコールをしていたあたり。かっこいいけどお前なんにも考えてないだろ!的な。

そんなこんなで文句たらたらだけど、 解決編で明かされる推理の鮮やかさには黙るしかないし、600ページ近く読んだだけの甲斐はあった。ちなみに今回も読者への挑戦状に果敢に挑んだわけですが、惨敗でした。なんとなく「こいつだろうな」というのはありつつ、どのように特定できるのかは一切わからなかった。

クイーンのミステリは不可能状況を可能に変える鮮やかなトリック、というより、些細な証拠品から引き出される鋭利な推理こそが魅力、なんだろうな。まだ2作しか読んでいないのであれですが。そういうところは大好きなので、今後も読んでいきたい。

(フランス白粉でもそうだったけど、登場する夫人がよく××しているのは、当時の作品にはよくあることだったんだろうか)

エジプト十字架の秘密 (角川文庫)

エジプト十字架の秘密 (角川文庫)