メモ:ダイマックスわざと語種
ポケットモンスターの最新作ソード・シールドには、どんなポケモンでも巨大化して戦うことができるようになる「ダイマックス」というシステムがある。また、特定のポケモンに限られるが、(大きさ以外の)見た目まで変化する「キョダイマックス」というシステムもある。
「ダイマックス」したポケモンは、通常のわざではなく、元のわざのタイプに応じた「ダイマックスわざ」を使えるようになる。一方、「キョダイマックス」の場合は、ポケモンごとに専用のわざである「キョダイマックスわざ」も使えるようになる。
このダイマックスわざは、「ダイ×××」や「キョダイ×××」のような形式をとるが、ダイマックスわざとキョダイマックスわざで、後接する語種に違いが出ていて面白い。
(1) ダイマックスわざ
ダイストリーム(みずタイプ)、ダイサンダー(でんきタイプ)、ダイドラグーン(ドラゴンタイプ)……
(2) キョダイマックスわざ
キョダイセンリツ(ラプラス)、キョダイゴクエン(リザードン)、キョダイサイセイ(カビゴン)……
(1)のように、ダイマックスわざでは原則的に、「ストリーム」「サンダー」「ドラグーン」のような外来語が後接する。一方、(2)のように、キョダイマックスわざでは原則的に、「センリツ(旋律)」「ゴクエン(獄炎)」「サイセイ(再生)」のような漢語が後接する*1。
ただし、ダイマックスわざの中には、この対立の例外とみられるものもある。
(3) ダイアーク(あくタイプのダイマックスわざ)
(4) ダイソウゲン(くさタイプのダイマックスわざ)
ダイアークは「悪」に長音を挿入したものであり、外来語ではない。一方で、長音の挿入は、外来語らしさを増すための方略とも考えられ、純粋な例外とは言えない。ダイソウゲンに関しては、「草原」という漢語そのままであり、例外と言える。
「ダイソウゲン」に関しては例外だが、概ね、ダイマックスわざは外来語、キョダイマックスわざは漢語のような対立がみられることも、また事実であろうと思われる。
日本語の「大(だい)」「巨大(きょだい)」そのものには、特定の語種と結びつくという特徴は見られない。
(5) 大事件、大災害、大勝利
(6) 巨大迷路、巨大資本、巨大都市
(7) 大スター
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(8) 大ジャンプ
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(9) 巨大モンスター
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(10) 巨大モニュメント
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おそらく、「日本語としてどうか」という話と、「『わざ』の名前として考えたときにどうか」という話は別物なのだろう。
「大(だい)」は主に接頭辞として働き、「巨大」は単独で形容動詞となる、というような違いはある*2ものの、この違いは、ダイマックスわざとキョダイマックスわざにおける語種の違いと関連づけることはできないような気がする。
(11) ✕大な建物
(12) 〇巨大な建物
ここから雑な話になるが、素朴に考えると、ダイは英語でも出現する音なので、その影響があるのかもしれない。
(13) dinosaur(ダイナソー、恐竜)
(14) dive(ダイブ、潜る)
(15) dial(ダイアル、文字盤・目盛り)
英語と日本語の中の外来語の発音が違うことは言うまでもないが、「ダイナソー」も「ダイブ」も「ダイアル」も外来語として日本語の中に取り入れられていると考えてよさそう。
つまり、ダイマックスわざの「ダイ」は意味や由来としては間違いなく漢語の「大」から来ているだろうが、その「ダイ」を外来語的な音として再解釈することで、「ダイマックスわざ」においては外来語を後接してもいい、「わざ」の名前としても遜色のない形式になっている、という感じだろうか。
この説明では、「巨大」に関しては、「キョダイ」という音は、外来語としては再解釈できず、あくまで漢語を後接することになる、ということになる。実際、「キョダイ」という音が含まれた外来語はなさそう。実際に調べてはいないので、あったらごめんなさい。
どういう音韻が外来語っぽくて、どういう音韻が漢語っぽいのかという話は詳しくないのでわからないが、あくまで「ダイ」と「キョダイ」の間にはそういう対比が読み取れそう、という話でした。
(前述のとおり、「大」も「巨大」も外来語を後接することももちろんある。あくまで「わざ」として考えたときに、こういう対立があるのかなぁという話)
そもそも「ダイマックス」からして、「大」に「マックス」という外来語を接続させていて、こういう表現をポケモンというゲームが採用していること自体が面白いなぁと思います。