日記:「はじまりのうた」
同じ演奏が2回異なる形で描かれる作品が好きだ。*1
いろいろな形がある。最初は楽しかったはずの演奏が、二度目は切ない。逆に、かなしたかったはずの演奏が、どこか楽しいものとして再演される。
この映画におけるその演出は、白眉だと思う。
皆様は白眉という言葉を普段使うだろうか。私は使わない。つまりそれだけ強調したいということだ。
詳しくは語らない。見て、感激してほしい。
原題はBegin again。ただのはじまりではなくて、もう一度。
タイトルの通り、かつて優秀だったプロデューサーとニューヨークから地元に帰ろうとするシンガーソングライター・グレタの出会いから物語は始まる。
落ち目のプロデューサー・ダンはグレタに才能を見出すが、彼は会社を首になっており、彼女の作品を世に出すことはできない。会社との交渉にも、形になったものが必要だという。そこで彼女たちは、予算がなくてスタジオを借りられないなら、と奇抜な方法で収録を開始する。
ここからはネタバレありつつ。
素敵な曲がたくさん出てくるけど、しゆはComing Up Rosesがいちばん好きだったな。
諦めの淵にいた人たちがひとつの出会いから再起する物語。
そこまで追いつめられることもない。
とんとん拍子にうまくいくから、そういうのが苦手な人はダメかもしれない。
登場人物の人間関係の行きつく先とかを見ると、とてもバランス感覚がいいなぁと思う。
画面も全体的にきれいで、たまに「いい!」って言えるような描写もあって好きだ。ダンとグレンが二人で音楽を聞きながら街を歩くシーンとか。
全体的に映画作りが上手なんだろうなぁという気持ちになる。そのうえ音楽もいいので、すごい。
グレタが「またヨーロッパとかで、みんなでおんなじことがしたいね」みたいに言うシーンがよくて、彼女には成功のために頑張っているわけじゃない。心から音楽を楽しんでいるのが伝わってくる。実際、全体を通して彼女とダンは本当に楽しそうなんだ。
音楽があれば平凡な風景が意味のあるものに変わる、というセリフがよかった。自分のためにメモっておこう。
*1:映画大好きポンポさん【創作漫画】「映画大好きポンポさん」漫画/人間プラモ [pixiv]のマイスターとか、実際に見てみたいよね