日記:今年の百合3選

あんまりブログに書いていないのですが、女性どうしの関係を描いた、いわゆる百合がちょっと好きなので、これも3つくらい選んでみようと思う。かなり自由に選出するので注意。ネタバレはしない。

 

 

 

1.やがて君になる

百合界隈では有名な漫画です。百合の面白さのひとつに、「こういう関係って面白くない?」という構造の提案みたいなものがあると思う。百合じゃなくてBLでも男女でもいいんだけど。そういう構造に焦点を当てた物語として水準が高いものになっていると思う。「誰も好きにならない主人公」と「そんな主人公が好きな先輩」。さらに先輩は、主人公に対して絶対に自分を好きになってほしくないと思っている。だから「誰も好きにならない」人間が「誰かを好きになってハッピーエンド」みたいな着地点にはしづらい。では、どうするか。そこに構造としての関係性の面白みがある。

しばらく前から連載しているので別に今年じゃないんですが、あんまり語れていなかったので言及しておきます。

 

2.一ノ瀬志希も人間でした/一ノ瀬志希は臆病でした

アイドルマスターシンデレラガールズシリーズの二次創作小説です。正確には「人間でした」のほうは2016年の冬コミで売られていたものですが、ダウンロード販売とかは今年だったし今年ということで。

これは上とは打って変わって、関係性・構造というよりは、一ノ瀬志希というキャラクターに焦点を当てた物語です。あらすじはシンプル。「一ノ瀬志希が死ぬ話」とそのifで「一ノ瀬志希が死ぬのをやめる話」。「一ノ瀬志希も人間でした」というタイトルが素晴らしくて、「彼女が普通の人とはちょっと違うということ」「でもやっぱり普通の人が持っているなにかを持っていたということ」「そして過去形から察せる、一ノ瀬志希も人間だったという気づきが手遅れだったこと」、短いタイトルでいろんな意味がこもっていてすごい。

「人間でした」は一ノ瀬志希が所属するLiPPSというユニットのメンバーの視点から彼女の死が語られていて、妙な生々しさがある。「臆病でした」は「人間でした」で彼女の死を見せつけられているからこそ、奇跡みたいに生き残ることになった彼女について泣きそうになる。

百合としてのよさは、人間が人間に影響を与えることについて丁寧に描かれているところ。それがどんな結果を招くかはわからない。「人間でした」のように死を招くかもしれないし、「臆病でした」のように誰かを救い上げることができるかもしれない。でもどちらにせよ、誰かが誰かに影響を与えたり、誰かから影響を受け取ったり、それは希望なんだと思う。

 

3.プリンセス・プリンシパル

アニメ。女の子がスチームパンクなロンドンでスパイをやっている。

百合の面白さに構造としての関係性があると言ったが、この作品のあるキャラクターとあるキャラクターの関係性は、物語として面白いというより、絵画のように綺麗なものだと思う。でもこの構造が明かされる部分が作品の盛り上がりポイントでもあるので、多くは語るまい。

「初めて出会ったときのやりとりを、(もう会えないかと思うほどに長い別れののちの)再会で発言者を入れ替えて再現する」みたいなシチュエーションが好きな人は好きだと思う。

運命的な組み合わせ、みたいなのは普段はあんまり好きじゃないのですが、ここまで美しく組みあがった関係は認めざるを得ない……。

作品全体は基本的に非情でダーティな展開が多いので、そういうのが好きな人にもおすすめ。