日記:「迷路館の殺人」

綾辻行人三冊目。

館シリーズの二作目、水車館の殺人の感想は以下にまとめてある。

日記:上半期に読んだミステリの感想 - しゆろぐ

館シリーズの中でもとりわけ評判のいい作品だが、評判通りの出来だった。

本作は自分が居合わせた事件を再現した推理小説を読み始めるという導入から始まるが、モチーフとして「作中作」「推理小説」というものをこれでもなく遊び倒している感じで面白い。

老いた推理作家の遺言。それは、集まった推理作家たちに迷路館を舞台にしたミステリを競作させて、一番の傑作を書いた者に全財産を譲るというもの。

いかにもな舞台、いかにもな設定、そしてとうとう起こってしまう、いかにもな事件。

推理作家の死体を予言するように残された、本人の書きかけの原稿……。

 

綾辻行人に対するなんとなくのイメージとして、「ザ・王道/ザ・本格ミステリ」みたいなイメージを持っていたが、この作品はちょっとメタな視点も入っている。まぁよくよく考えると「十角館」の時点で、近年のミステリ論みたいなことを登場人物が語らったりはするんだけど……。

十角館は「孤島の中/孤島の外」、水車館は「過去/現在」という二層構造をうまく使っていたが、本作もたがわず「現実/(現実に基づいた)推理小説」という二層構造を面白く使った仕掛けになっている。

なんというか、「正しくミステリ好きのためのミステリ!」というのをババーンを打ち出している感じで潔い。

「迷路館」を舞台にしたミステリで競作をする、という事件が起きる前段階でも結構わくわくするシチュエーションなのもよかった。ちなみに俺はぼーっとして何も考えずに読んでいたので、その時点では「なるほど! 今回は作中作を島田が推理していく感じか!」と思ってしまった。そもそも冒頭で「実在の事件を舞台にした作中作」って設定が提示されてるのに。あほか。

そんな感じで、以降ネタバレ

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

 

 

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日記:二日目のカレー

「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句を信じていない。

いや「二日目のカレーは美味しい」ということ自体は真実かもしれないが、そうであったとしても、私がその美味しさを実感できるほど上等な味覚を持っていない。味の解像度というものが低いのだろう。実際に料理をする際、味を細かく調整することに頓着するのも私は苦手だ。市販の調味料一つで済むのなら、それが楽でいい。

 

しかしながら、「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句は嫌いではない。

この決まり文句には、生活における豊かさが宿っているような気がする。カレーを食べることに対するわくわくとした気持ちというか、二日目のカレーという日常の細部をしっかりと踏みしめて味わおうと言う心意気を感じる。私は、そういう風に日常の細部を踏みしめるのが苦手な反面、そういうことができる人に対する憧れもある。

カレーをつくって、「二日目のカレーは美味しい」という言葉を唱えるとき、味はわからずとも、日常を楽しむ心意気だけは真似ることができる気がする。

そういう感じで、「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句を私は信じていない。しかし「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句をおまじないとしてとらえるとき、私はこのきまり文句がきっと好きなのだと思う。

日記:苦手なタイプの物語の「トンネル」

下の記事がすこし話題になっていた。

物語の「トンネル」を通りたくない人は意外と多いのかもしれない - ジゴワットレポート

詳細は本文を読んでほしいが、ここでいう「トンネル」というのは物語における「胃が痛い展開」とか窮地とかを指している。「トンネル」があるからこそ、そこを抜けたときにカタルシスがあったり、先の展開が読めない楽しさがあったりするけれど、一方で、そういう物語の「トンネル」が苦手な人もいるんだなーといった内容になっている。

カタルシスという言葉は、こういう「トンネル」の存在を前提にするもので、多くの物語に「トンネル」は付き物だと思う。にしても、「トンネル」という表現はわかりやすくていい。

上の記事を読んで、自分について考えてみると、好きなタイプの「トンネル」と苦手なタイプ「トンネル」があるなぁとなんとなく思った。

例えば以前、北村薫の「スキップ」を冒頭で読めなくなってしまったのだが、これは私が苦手なタイプのトンネルの話なのだと思う。

 

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メモ:部屋と立ち位置とか距離とかの話 (ひだまりスケッチ×365)

ひだまりスケッチというアニメの2期、ひだまりスケッチ×365*1*2を見ていたんですが、登場人物の一人である沙英さんの部屋の描写がなんとなく気に入ってるので、それについて書こうかと思った。(ので、書く)

念のため書いておくと、ひだまりスケッチは、主にひだまり荘に住む4人の日々が描かれる日常系アニメで、沙英はその住人の一人にあたる。ひだまりスケッチ×365の時点では、高校2年生の沙英とヒロ、高校1年生のゆのと宮子の4人。ひだまり荘はやまぶき高校という学校のすぐ近くにあるアパートで、代々やまぶき高校美術科の生徒が暮らしているという設定。

1期は遥か昔に見たので、もうあんまり覚えていない。3期はまだ見ていない。そんな感じでにわかの視点です……。

*1:ひだまりスケッチ×365』2008,原作:蒼樹うめ,監督:新房昭之,制作:ひだまり荘管理組合,アニメーション制作:シャフト

*2:本文中で引用している画像はすべて『ひだまりスケッチ×365』からの引用

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日記:趣味について(2018年の振り返り、2019年の目標)

一年の計は元旦にあり。翻って、一年の計を決めることになるので、今日こそが実質元旦になる。

この記事では、2018年の自分の趣味に関する振り返りと、2019年の趣味に関する目標を書いてみる。

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日記:自分でつくった短歌を解析する

1.はじめに

短歌を作り始めてそろそろ1年になるので短歌を形態素解析して、頻出する単語*1とかを計量しました。

対象は2017年12月22日~2018年12月22日までにツイッターでつぶやいた200首です。

解析と仰々しいことを書いていますが、自然言語処理・統計系のほにゃほにゃに詳しくないので、本当に数を出しただけです。

(特定の表現の多寡を考えるためには他のデータと比較することが大切ですが、特にそういうこともしていません)

 

*1:形態素解析における「形態素」をこの記事では「単語もしくは語」と表現しています。

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日記:「やがて君になる 佐伯沙弥香について」

 読んだ。

「佐伯沙弥香について」と題するスピンオフにふさわしく、キャラクター形成の細部が丁寧な作品だった。

感想:佐伯沙弥香は大学選びでも人間関係を理由にして遠くに行く選択をしてほしい。たぶんそうはならないけど……。

ネタバレあり。

 

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