メモ:あたらしいのになつかしい「新」の話(アニメのタイトルにおける「新」)

1.はじめに

(しん)」は文字通りに新しいことを意味する言葉で、しばしばアニメ等のタイトルに「」という言葉が使われることがある。

例えば、「巨人の星」(1977-1978)は、アニメ「巨人の星」(1968-1971)の続編だ。

以前、このブログで「!!」が続編をあらわす場合について取り上げたこともあるが、「」はストレートに作品が新作であることをあらわしていて、オーソドックスな表示と言える。

メモ:続編で「!」が増えるタイプのアニメタイトル - しゆろぐ

ところで、私はこの「」に対して、タイトルで使われるとどこかレトロな、「あたらしい」はずなのになつかしい表現という印象を受ける。

アニメではないが、サカナクションの「宝島」のMV*1や、「怒り新党」のコーナーである三大〇〇調査会も、レトロな雰囲気でデザインされている。

」自体は「新しい」という意味なのに、それが「懐かしい」と感じられるとすれば、それは興味深い

この記事では、タイトルにおいて「新」がどうして懐かしく感じられるのかということについて考えてみる。もちろん、私の印象は印象に過ぎないので、実際にタイトルで「新」がどのように使われてきたのかということを見ていく。

また、今回はアニメのタイトルにおける「新」を見るが、鎌倉時代に編纂された「新古今和歌集」のように、「新」がタイトルに使われる用法の歴史はとても長い。今回扱うのは、その中でもごく一部の話になる。

 

 

2.二種類の「新」

まず前提として、タイトルに使われる「新」には2種類ある。

一つは、先に見た「新・巨人の星」のような続編の「新」だ。

もう一つは、リメイク・リブート・翻案のように続編ではなく一から作り直した作品に使われる「新」だ。

例として、「新・エースをねらえ!」(1978-1979)は、「エースをねらえ!」(1973-1974)の続編ではなく、キャストを変更してリスタートを切った作品*2である。

また、アニメ「新宝島」(1965)は、海外小説の宝島の登場人物を動物を置き換える等して翻案した作品*3であり、これも宝島の続編を描いた作品ではない。

この2種類の「新」について、仮に続編型と(リメイク・リブート・翻案をまとめて)リスタート型と呼ぶことにする。

結論づけるのはまだ早いが、「新」が持つレトロ感の一端は、リスタート型の存在に由来すると思われる

リメイク・リブート・翻案は、既に終わった作品を新しく作り直すものだ。これらの作品に「新」が使われると言うことは、すなわち「懐かしい作品」がリスタートを切るとき「新」がセットになって登場しやすいということでもある。

 

3.アニメタイトルにおける「新」の変遷

さて、アニメタイトルにおける「新」に2種類存在するということを確認した上で、ではその2つの「新」がどのように出現しているのかを通時的に見る。

データは、以前の記事でも用いたanilogia*4を主に用いた。anilogiaのデータを、更にwikipedia等を参照しながら作品が上記の分類における続編型かリスタート型か判断した。年代に関しては、放送開始年を参照した。

今回扱う「新」はあくまでそのタイトルが新しいことを述べる「新」に限るため、新世紀エヴァンゲリオン」のような例は除外している。「新世紀エヴァンゲリオン」において「新」は「世紀」を修飾しているのであって、アニメ自体が旧作に対して新しいことを示しているわけではない。

一方、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」のような例は除外していない。「新」が頭に出ていないが、旧作の「新世紀エヴァンゲリオン」を踏まえて新しく作られた劇場版であることを示す形で「新」が用いられているためである。

また、今回扱う作品はテレビ放送版と劇場版に限った。その上で、「新まんがなるほど物語」(1988-1989)のように続編型とリスタート型で判別がつきづらいもの、「パーマン(新)」(1983-1985)のようにデータ上では(新)が付されているもののwikipedia等で(新)が付されている事実が確認できないタイトル等は一部除外した。

以上のような手順で「新」がタイトルにつくアニメ作品の変遷を見ると、以下のグラフのようになる。

(2010年代のデータは、2017年までのものとなっている)

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1970年代は、続編型の「新」が7作品あり、あくまで「新」は続編をあらわす表現として捉えられていたと思われる。

しかしながら、1990年代リスタート型の「新」が5作品、続編型の「新」が2作品となり、逆転する。2010年代には、「新」がタイトルにつくアニメは10作品となる。

すなわち、1970年代・1980年代においては「新」は単純な続編に使われることが多い表現だったが、1990年代以降は「新」はリメイク・リブート・翻案作品で使われやすい表現へと移り変わっていることになる*5

2000年代、2010年代におけるリスタート型の「新」の躍進は、ドラえもんエヴァンゲリオンという二つの作品の存在が大きい。

ドラえもんは2005年に幅広い世代から親しまれていた声優を一新し、大幅なリニューアルを行った。それに伴い、劇場版も「のび太の恐竜2006」(2006)以降、ドラえもんの映画作品のリメイクを行うようになり、その中で「のび太魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜」(2007)、「のび太の宇宙開拓史」(2009)のように「新」を使うタイトルを上映するようになった。

また、「新世紀エヴァンゲリオン」(1995-1996)に関しても、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」(2007)以降、新劇場版と題して、旧作のストーリーのリメイク(あるいはストーリーに変化がある点でリブート)作品を上映した。

 

前節で述べた通り、リスタート型に関してはそもそも「懐かしい作品」の再スタートに使われており、それがそのままなつかしい感じにつながっていると推測することができる。リスタート型が多くなるということは、それはそのまま「新」が懐かしい雰囲気を持った表現として捉えられることにつながるだろう。

また、続編型で用いられる「新」が1970年代・1980年代に固まっていることも「(現時点から振り返ってみれば)懐かしい作品において『新』が使われていた」という認識に繋がるのではないか、と思われる。

つまり、続編型の減少、リスタート型の増加、その転換が重ねっていくことで「新」はタイトルにおいてあたらしいのになつかしい表現としての位置を確立していったのではないかと思う。

 

もちろん、今回はあくまでアニメのタイトルのみを扱っており、不足がある。例えば、続編型が何故減少したのか、何故このような変遷となっているかも含めて考えるには、アニメのタイトルだけを取り上げるだけでは足りないだろう。

というか、尤もらしい口調で書いているのでアレですが、データの数があまりにも少ないので、基本的には与太話として受け取ってくださいね。

 

4.余談として(「新」から「シン」へ)

ここからは余談です。

シン・ゴジラ」が上映された時期、「シン」の意味するところが話題となった。

これに関しては、以下のように「いろんな意味があるよ」という解答が出ている。

これは、庵野総監督のアイディアです。“新、真、神…”見る人にさまざまなことを感じてもらいたいということで、正解があるわけではありません

「シン・ゴジラ」の「シン」の意味 正解はなかった? - ライブドアニュース

 が、「新」だけで解釈するにしても、解釈は一意に定まらない。この記事で書いたように、「新」には単に続編に使われる場合の「新」と、リメイク・リブート・翻案で使われる場合の「新」があるからだ。

もちろん、「シン・ゴジラ」は怪獣という言葉が使われないなど、他の作品の続編として作られていないようではあるが、ではもうじき公開する「シン・エヴァンゲリオン」についてはどうなるだろうか。

「シン・エヴァンゲリオン」は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」に連なる劇場版の新作であり、2021年公開の最新作である。今回の記事では、ヱヴァンゲリヲン新劇場版の一連の作品をリスタート型に分類している。

このシン・エヴァンゲリオンに関連する厄介な問題として、登場人物の一人がある渚カヲルの「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」という台詞などを根拠に、実は新劇場版はテレビ放送版のエヴァンゲリオンからループした世界を舞台にしているという説が存在する。

ここでは、ループ説について詳しく取り上げることはしないが、もしループであるとすれば、続編型とリスタート型のいずれに分類すればいいのか、という問題が出てくる。旧作からループした世界が舞台であるとすれば、それは紛れもなく旧作の続編となってしまうが、一方でストーリーを共有した過去の作品を作り直すというリメイク・リブートの側面も存在する。

あるいは、「続編であること」と「リメイクであること」は矛盾しなく同居すると考えるべきなのかもしれない。

まぁそもそもループとかしてないよってオチだったり、明確しないまま終わったり、そもそも終わらない可能性もあるので心配するのは杞憂ですね。そうなったらまた考えます。

 

付録:「新」がタイトルにつくアニメの一覧

年代に関しては放送開始年代のみ記述している。

 

テレビ放送作品(続編型)

オバケのQ太郎(1971)

昆虫物語新みなしごハッチ(1974)

新巨人の星(1977)

新巨人の星Ⅱ(1979)

みつばちマーヤの冒険(1982)

新メイプルタウン物語 パームタウン編(1987)

プロゴルファー猿(1988)

グリム名作劇場(1988)

新・ビックリマン(1989)

くまのプーさん(1995)

新忍者玉丸(2008)

学校の コワイ うわさ 新 花子さんがきた!!(2010)

テニスの王子様(2012)

新あたしンち(2015)

Wake Up, Girls! 新章(2017)

 

テレビ放送作品(リスタート型)

新宝島(1965)

新・エースをねらえ!(1978)

竹取物語1000年女王(1981)

ど根性ガエル(1981)

PEACH COMMAND 新桃太郎伝説(1990)

新機動戦記ガンダムW (1995)

機動新世紀ガンダムX(1996)

天地無用!(1997)

新白雪姫伝説プリーティア(2001)

戦国英雄伝説 新釈 眞田十勇士 The Animation(2005)

Rocket!ぼくらを月につれてって新・月世界旅行(2008)

HUNTER × HUNTER新(2011)

 

劇場上映作品(続編型)

新・巨人の星 嵐の中のテスト生(1973)

新巨人の星(1977)

新巨人の星(1978)

新メイプルタウン物語 パームタウン編 こんにちは!新しい町(1987)

きまぐれオレンジ★ロード そして、あの夏のはじまり(1996)

劇場版 魔法少女 まどか★マギカ [新編] 叛逆の物語(2013)

 

劇場上映作品(リスタート型)

新説カチカチ山(1936)

新猿蟹合戦(1939)

ど根性ガエル ど根性・夢枕(1982)

新機動戦記ガンダムW Endless Waltz ―特別篇―(1998)

映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い(2007)

新SOS大東京探検隊(2007)

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007)

映画ドラえもんのび太の宇宙開拓史(2009)

ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破(2009)

劇場版 銀魂 新訳 紅桜篇(2010)

映画ドラえもんのび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち(2011)

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012)

映画ドラえもん 新・のび太の大魔境~ペコと5人の探検隊~(2014)

新劇場版『頭文字D Legend1-覚醒-』(2014)

新劇場版『頭文字D Legend2-闘走-』(2015)

攻殻機動隊 新劇場版(2015)

新劇場版『頭文字D Legend3 -夢現-』(2016)

映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生(2016)

*1:サカナクション、昭和風レトロ&ド派手な「新宝島」MV完成 - 音楽ナタリー

*2:エースをねらえ! - Wikipedia

*3:新宝島 (テレビアニメ) - Wikipedia

*4:文化庁による「メディア芸術データベース」のデータを、骨しゃぶり氏がwikipedia等を参照しながら加工してつくった作品リスト

*5:ここでは、アニメの数そのものの変化が考慮できていない。単純にリメイク作品の割合が増えている可能性もある