日記:三ツ星カラーズで描かれるルール違反について

三ツ星カラーズというアニメは上野を舞台に、正義の組織「カラーズ」を名乗る小学生3人組が遊んだりいたずらをしたり、わんぱくに過ごす様子を描いたアニメです。

このアニメを見ていて一番驚くところとしては、「子供たちがルールを破っても叱られない」もしくは「叱られるシーンが描かれない」というところがあります。

これがちょっと面白いと思ったので、ちょこっといろいろ書いてみようと思います。

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象徴的なのが7話です。

学校でいたずらをしたカラーズの一人が、罰として渡されたゴミ袋がいっぱいになるまでゴミ拾いをすることを先生から命じられるというエピソード。カラーズはこれに対して、路上に設置されたゴミ箱のゴミを渡されたゴミ袋に移すことで、「ゴミ袋をいっぱいにする」という課題を解決します。しかも、三人は「いいことした」と得意げです。

ここでは、罰として善行であるゴミ拾いを命じたはずが、ゴミ箱からゴミを盗んでいくという形で返されるという、罰の機能不全が描かれています。ゴミ箱からゴミを持っていくのは法的に怪しい、ルールにそぐわない行為です。

しかも、カラーズの一人の母親から、ゴミ拾いのごほうびとしてチョコレートを受け取る始末。その母親は子供たちがやった”ゴミ拾い”の実態を知りませんから、彼女が常識を欠いた人物というわけでもありませんが。

「バレなきゃ叱られない」と言うと当然のことではありますが、物語をつくっていると、つい悪いことをした人間が適切に罰される展開をつくってしまいがちです。悪ガキがいたずらをして、バレて、散々に怒られることでオチがつく、というのはクレヨンしんちゃんなんかでも定番の流れでしょう。しかし、この作品はそれをしません。

 

3話で立ち入り禁止区域に立ち入ってペンキ塗りたての道を荒らして回ったときも叱られませんでした。

8話で博物館の柵を超えて侵入禁止エリアに侵入した際は、警備員に叱られてはいるものの、叱られる描写がカットされます。侵入するまでのシーンと、「怒られたねー」とけろっとしながらほかの場所に移動するカラーズの三人だけが描かれます。

先述した7話でも、罰としてゴミ拾いを命じられた事実は登場人物の口から述べられますが、実際に叱られて先生に罰を与えられるシーンは描かれません。

 

こういう描写のされ方について、雑なストーリーをつくれば、「最近のオタクは打たれ弱いからキャラクターが叱られるシーンが描かれない」みたいな話になるのかもしれません。しかし、悪ガキがいたずらをして叱られるという流れがそこまでストレスのある描写かといえば、あまりそういう気はしません。

個人的にはむしろルールを破ったときに叱られたという事実を重く受け取ってほしいというのが大人の願望に過ぎず、ルールの外にいる子供にとって、ルールを破ることが大した問題ではないという感覚を忠実に描いているのではないかと思います。大人の感覚では、ルール違反がそのままで見過ごされてはいけないので、物語としてはバレて、叱られる展開にしたいところです。しかし、子供にとってはバレなければ叱られることはありませんし、叱られたとしてそれは大した問題ではありません。

(もっとも私は、母親に「誰が悪いって決めたのかちゃんと考えてる?」みたいな感じで叱られるくらいルールや暗黙の了解におびえる子供だったのですが……)

こういう描かれ方が良いのか悪いのか、そもそも良い悪いという尺度を持ち込むことが適切なのか、ということはよくわかりません。しかしながら、自分が暗黙のうちに了解させられている常識について自覚的になれたという点で、この作品のルール違反に関する描写は個人的にとても面白いものでした。

ここから話を広げて、「ルールの外」に関する別の例として世代間の常識の差とか文化の差に言及していこうかと思いましたが、個人的にアニメの感想として無粋なのでやめました。