日記:「君の名前で僕を呼んで」
音楽がいい映画だった。すごく。
DVDをレンタルしてみたけど、開始一秒OPの最初を見て、映画館に行けばよかったとすこし後悔した。
人間のやりとりや機微、恋愛を描いた映画って映画館で見なくてもいいかなーと正直思ってたけど、ちょっと反省。
全体的に透明感がある音楽で、エリオのあまりに瑞々しい恋が描かれる本作を、効果的に演出していたと思う。
(トリック・致命的なネタバレがあるタイプの映画でもないですが、ふわっとラスト付近の内容まで語ってしまうので、注意してください)
前半は、エリオがオリヴァーに惹かれていく様が、直接的に言葉で説明されるのではなく、視線や態度、その他その場を取り巻くあらゆることによってわかっていく感じで、よかった。
エリオとオリヴァーが初めて二人で迎えた朝のオリヴァーの表情がとても苦しいけど、エリオに顔を向けられたときは笑顔に努めている様子が苦しい。
そこらへんの、年上として描かれていた人の、弱さが暴かれていく過程みたいなものが、私は結構好きなんだと思う。
ちなみにそのすこし前の夜のシーンは、ベッドに座って足を近づけたりしている描写とかも好きです。
結構個人的にはどう受け取ればいいかわからないくだりもあった。
エリオとマルシアについてとか。
マルシアが友情を示すのは適切な着地なのかもしれないけど、なんとなく納得し切れていない。でも、単純に怒らせたり、決別させたりすればいいかと言えば、それがいいかはわからなくて。
エリオとマルシアが握手するシーン自体は好きなのだけど、それまでの過程とか、いろいろやっぱり納得し切れない気持ちがある。
あと、想いを伝えようとするシーンとか、ラストシーンとか、長回しのシーンが雄弁で印象的な映画でもあったと思う。
最後に、父親がエリオに語りかけるくだり、「感情を無視することはあまりに惜しい。痛みを葬るな。感じた喜びも忘れるな」というセリフが印象に残った。というか刺さります。
いつから、ものわかりが良いふりをしてしまうようになってしまったんだろう。
ものわかりが良いふりをしているうちに、消えてしまうものが確かにあって、こんなことを今更言われても(別に俺が言われた訳ではない)という気持ちになりつつ、色々なことを思ったりした。