日記:「名探偵ピカチュウ」

見てきたぞ!

やたら高所から落ちそうになったり、割と派手にバカスカやったり。よくも悪くもハリウッドって感じ。ストーリーの細かい部分には粗が目立つ気もするけど、そういうところについては一切期待していなかったので楽しかった。

なんといっても、実写の街中で人と共生しているポケモンたちの描写が凄い。

独自のテイストでデザインされたポケモンたちの、実在感というか、街の中にしっかり生きている感じが凄い。

まぁそういう存在感がよかったからこそ、アクションシーンよりもっとポケモンが暮らしてるシーンがたくさんあったら嬉しいみたいにも思うんだけど。

ピカチュウかわいい。 

 

物語の筋の話に触れると、これは父の死を探る息子の話でもある。

父といっても、必ずしも親しくなかった、必ずしも大好きとは言えない、そんな父の死だ。

そんな父の死をめぐって、父はまだ生きているはずだから探そうと、父のパートナーだったピカチュウが語りかけてくる。

主人公のティムは、ポケモンを持たない人間だ。

ポケモンがいるのが当然の世界を描く上で、現実世界の視聴者と作品世界をつなげる橋渡しでもあるのだろうし、ティムとピカチュウが反目し合うというのはバディものの基本を押さえた設定とも言える。そんなに反目し合ってたわけでもないけど。

まぁそんなわけで、父子の物語やバディものに興味があって、ポケモンが好きな人ならおすすめ。でも、やっぱりバディものを求めるとやっぱり「うーん」となってしまうかもしれない描写もある。そんな感じ。

 

個人的に一番よかったポケモンメタモン

 ここからネタバレ

ポケモンセンターオリジナル ハンドタオル 映画「名探偵ピカチュウ」

ポケモンセンターオリジナル ハンドタオル 映画「名探偵ピカチュウ」

 

 

 

 

この作品は、ポケモンを持たない主人公ティムに対して、友人がポケモンを捕まえさせようとするシーンから始まる。これ、「ポケモンがいる社会」を描く上で素晴らしい入り方だと思います。

死んだ父を知る警官から、ポケモンのパートナーがいたほうがいいと勧められたり。父の死を追う記者から、パートナーがいない点を不審情報とメモされたり。

なんというか、結婚するのが当然の社会において、一定の年齢で未婚の人に向けられる目に似ている感じもする。ここら辺の描写はよくも悪くも「人とポケモンが共生している」社会を構築する上でありそうな描写。

 

メタモンのバトルシーンがよかった。なぜなら不定形生物が好きだから。不定形生物がめまぐるしく姿を変えながら傍若無人に戦う様子、めちゃくちゃ興奮する。

というか普段から人に化けて仕事をこなす無口なメタモンがそもそも良くないですか? まぁ原作の「へんしん」はどう考えてもここまで便利なわざじゃないですけどね。目の前にいるポケモンにしか変身できないし。PP10だし。でもそんなことより不定形萌えとしてはメタモンの活躍が見れてよかった。

 

一番印象に残ったのは、フシギダネに連れられて歩くシーン。

ポケモンを苦手としていた主人公が、相棒のピカチュウを助けるために野生のポケモンに歩み寄ろうとするところも、ピカチュウとの交流の末に言葉の通じないポケモンともコミュニケーションを図ろうとするところも、ティムの成長という観点でカタルシスを生んでいる。その上で、一種幻想的とも言える野生ポケモンの世界が描かれる一連の流れが印象的だった。本作は前半で都会において共生する人とポケモンを描いているので、そういう描写との対比もよく効いている。

 

記憶喪失ものを見るたびに思っていることとして、記憶喪失状態で築いた友情や人間関係が、記憶を取り戻したときにどうなるのか、ということがいつも気になってしまう。

もともとまったくの他人であれば問題ないけど、本作ではピカチュウとティムが父子だったと明かされる訳だし。

(上でバディものを求める人が「うーん」となってしまうかもしれないと言ったのは、もちろんこのあたりの描写)

ティムとピカチュウの関係って、ピカチュウの記憶がなかったからこそ対等な友情になり得た訳で、それが父子だとわかったら複雑じゃないですか。

もちろん記憶を取り戻しても彼は彼なのだろうし、ティム君も複雑な感情を自分なりに噛み砕いて親子関係の回復を望んだんだと思うのですが……。

 

一応ストーリーで雑だなと思った点を挙げておきますが、別にそういうところを楽しむ作品ではないと思うので、雑でいいと思います。

・テレビ局で撮影してるところに何の説明もなく入った挙句、有名人父子の不仲な様子をティムのような一般人が知るくだりはいくら何でも雑。最初は「オープンなテレビ局なんだなぁ」くらいに思うことにしたけど、有名人の裏事情が垂れ流しになってる感じならやっぱり一般人が入れるのまずいのでは。

・何の対策もなく研究所に向かう一行。素人のティム、スクープを焦るルーシーはともかく、ピカチュウは本当にそれで名探偵を名乗っていいのか?

・ハワードはミュウツーを回収した時点でティムを泳がせておく意味はないだろうに、何故始末しなかったのか。始末しないにせよ、ミュウツーに精神を転移させている間自分は無防備になるはずなのに、それについてまったく考慮せず自分の部屋に招き入れているのは謎。一応護衛としてメタモンがいる訳だけど、それ以前に部屋に入れるなよと思ってしまう。

 

あと、わかっていて描写を避けたんだろうなーという部分として、「モンスターボールがない世界においてポケモンと人がパートナーになるときにどうやって合意を取るのか」というところがちょっと気になった。こういう疑問は、人とポケモンの絆や友情を描こうとすればするほど浮彫になってしまうところなのかな。

 

エンディング。ゲームプレイヤー向けの懐かしい演出が嬉しかった。ゲーム本編風のキャラクターのイラストとかも素敵。漢字とかカタカナを配置するときのセンスが、日本のものはちょっと違う感じがして、それも面白かった。

(日本の、英語を並べてかっこいい感じにしている画像も、英語話者からすれば「ちょっと違うな―」と感じるのかもしれない