日記:二日目のカレー

「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句を信じていない。

いや「二日目のカレーは美味しい」ということ自体は真実かもしれないが、そうであったとしても、私がその美味しさを実感できるほど上等な味覚を持っていない。味の解像度というものが低いのだろう。実際に料理をする際、味を細かく調整することに頓着するのも私は苦手だ。市販の調味料一つで済むのなら、それが楽でいい。

 

しかしながら、「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句は嫌いではない。

この決まり文句には、生活における豊かさが宿っているような気がする。カレーを食べることに対するわくわくとした気持ちというか、二日目のカレーという日常の細部をしっかりと踏みしめて味わおうと言う心意気を感じる。私は、そういう風に日常の細部を踏みしめるのが苦手な反面、そういうことができる人に対する憧れもある。

カレーをつくって、「二日目のカレーは美味しい」という言葉を唱えるとき、味はわからずとも、日常を楽しむ心意気だけは真似ることができる気がする。

そういう感じで、「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句を私は信じていない。しかし「二日目のカレーは美味しい」という決まり文句をおまじないとしてとらえるとき、私はこのきまり文句がきっと好きなのだと思う。