メモ:部屋と立ち位置とか距離とかの話 (ひだまりスケッチ×365)

ひだまりスケッチというアニメの2期、ひだまりスケッチ×365*1*2を見ていたんですが、登場人物の一人である沙英さんの部屋の描写がなんとなく気に入ってるので、それについて書こうかと思った。(ので、書く)

念のため書いておくと、ひだまりスケッチは、主にひだまり荘に住む4人の日々が描かれる日常系アニメで、沙英はその住人の一人にあたる。ひだまりスケッチ×365の時点では、高校2年生の沙英とヒロ、高校1年生のゆのと宮子の4人。ひだまり荘はやまぶき高校という学校のすぐ近くにあるアパートで、代々やまぶき高校美術科の生徒が暮らしているという設定。

1期は遥か昔に見たので、もうあんまり覚えていない。3期はまだ見ていない。そんな感じでにわかの視点です……。

 

沙英の部屋は、主に描写される範囲では、ソファの隣にデスクがある、というつくりになっている。一人暮らしとしては、快適そうだな~って感じの部屋。一応、部屋の中央にテーブルがあるようだが、描写されないことが多い*3

ソファとデスクの位置関係は、基本的に向き合って座るようにはできていない。むしろ普通に座ると逆方向を向くことになる、という関係。このソファとデスクの位置関係とか、そもそもソファ側とデスク側の2つの空間?を配置していることとか、そういうのが立ち位置(座り位置?)としてうまく画面づくりに活かされているなーと思うシーンが多いので、ここから具体的に見ていく。

 

ひだまりスケッチ×365 5話 沙英と妹

5話では沙英(画面右側)の部屋を久々に訪れた妹の智花(画面左側)との家族としての微妙な距離感が描かれている。

以下は、一日お互いちょっとしたことで言い合いをしながらも、最終的に沙英が智花にプレゼントを渡して、なんとなく落ちつくところに落ちつく、といったシーン。

以下の2枚の画像では、ソファに座り直すという形で、視覚的に距離が縮まる様子がわかる。

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ひだまりスケッチ×365 5話

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ひだまりスケッチ×365 5話

一枚目の画像では、それぞれが向く視線が噛み合っていない。そこから二枚目の画像で、隣に座ることで距離の変化だけでなく、同じもの(プレゼント)を見る際の、視線の重なりも描かれることになる。

何故かデスク上のスタンドライトしか点いていないので部屋が暗い。寝る直前なんだろうか。ただ、光源が右側にあることによって、二枚目の画像で沙英が智花の隣に座ったとき、影が重なる様子がわかりやすい。そこら辺もふまえて総合的に、部屋のつくりがよく機能しているシーンだと思う。

 

ひだまりスケッチ×365 1話・6話・9話 沙英とヒロ・ゆのと宮子

まず1話では、沙英の同級生のヒロ(画面左側)がソファに座っているが、5話で智花が座る位置との違いが面白い。

(デカデカと飾られている謎ポスターは、シャフトによくあるやつだと思う)

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ひだまりスケッチ×365 1話

5話における姉妹の描写ではソファに並んで座ることで距離が縮むという描写だったが、ヒロが座る位置が智花とは異なり、もともと右端である。5話における智花の描写を心理的な距離が縮まる描写と読むのであれば、これはもともと距離が近い描写ととらえることができるだろう。

また、お互いが横向きに座って、目と目を合わせているのが印象に残る。5話の智花の座り方とヒロの座り方を比べると、ヒロが斜めを向いてソファに座っている様子がわかる。

一方、6話の描写では、ヒロと沙英は目を合わせることなく、それぞれがそれぞれの作業をしている。しかしながら、この様子にも関係性が感じられる。

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ひだまりスケッチ×365 6話

1話・6話とヒロはソファの右端に座っており、この距離感は継続的なものだと思われる。6話では、沙英とヒロが目線を合わせることなく別の作業を行っているが、それでも距離は近いものとして描かれている。異なった時間を共有している生活感があらわれている上、単に向き合うだけが関係の近さではないとわかる描写だと思う。

ただし、その位置取りは2人でいる場合に限られる。住人4人が沙英の部屋に揃う際には、間に後輩のゆの・宮子が入る形になったりもする。

9話では、ヒロが左端に位置取り、後輩のゆの(画面中央奥)・宮子(画面中央手前)に位置取っている。

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ひだまりスケッチ×365 9話


このシーンは、ソファの側から境界?を越えてデスクの側に乗り込むゆのと宮子の元気な感じがよく出ている。また、そんなゆのと宮子をヒロが見守っているような様子も面白い。沙英とヒロの2人でいるときの位置と、4人の中にいる場合のヒロの立ち位置は当然違っていて、それが座り方にもなんとなく出ているんじゃないかと思う。

ここでは画像を出さないが、上であげた6話においては、左から、宮子・ヒロ・ゆのがソファに座る描写もあり、ヒロが広げる本を二人が覗き込むという描写になっている。9話の3人と順番は異なるものの、いずれも先輩であるヒロと後輩2人、という関係がソファでの描写にあらわれている。

 

ひだまりスケッチ×365 7話 みさとと沙英・ヒロ

卒業生である沙英の先輩・みさと(画面上側)が訪ねてきたときの様子。みさと先輩がソファに座り、沙英とヒロ(画面下側)はこの位置だと床に座っている。なんとなく力関係が見えて面白い。

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ひだまりスケッチ×365 7話

距離感というより、みさとの奔放なキャラクターがありありと見える描写になっている。このシーンで使われているのはソファだけで、デスクの方は誰も座っていない。いつもデスクに座っている部屋主の沙英が床に座っているあたり、みさととの関わり方がなんとなく見えてくる。

9話の画像では先輩然として見えた沙英とヒロが、9話におけるゆのと宮子のような「後輩二人セット」っぽい描写になっているのも面白い。

 

 

 

私は普段からこういうことを気にしてアニメを見ているわけではないから、別にひだまりスケッチだけが特別ではないんだろうと思う。いろんなアニメで画面づくりに対してはいろんな工夫がされているだろうし、よく言われる話だと、上手(かみて)とか下手(しもて)とかに意味を込めるケースも多々あるだろう。

ただ、ひだまりスケッチは、ひだまり荘での生活を中心に描くアニメなので、生活空間たる部屋が繰り返し繰り返し描かれる。その中で、それぞれの住む部屋の個性、住人の交流の中での位置づけなんかが描かれるところも面白い。

例えば、ひだまり荘の住人4人が集まるのは基本的にヒロの部屋であることが多い。ひだまりスケッチ×365においても、4人でテーブルを囲んで食事をするシーンが何度も何度も繰り返し描かれる。ヒロが料理上手なキャラということもあるけれど、冬にはこたつが出たりするので、やっぱりよく集まる場所という認識なんだろう。

(12月3日が舞台の9話においては、ヒロの部屋とゆのの部屋が描写されるが。ゆのの部屋はこたつではない。すべてのシーンを確認したわけではないが、1月11日が舞台の1期の1話においても同様。ここら辺の描写も、ヒロの部屋の、人がよく集まる場所としての位置づけに関係していそう)

一方、宮子の部屋は絵に使う道具などが散乱していて、宮子の部屋に集まることは基本的にない。何故かハンモックがあったりするあたり個性的。

沙英の部屋は、頻繁に集まるわけではないが、妹の智花が訪れたときや、沙英が執筆中の応援なんかで出てくるイメージ*4

ヒロと沙英の2人で過ごすときは、ヒロの部屋ではなく、沙英の部屋であることが多い、かもしれない。7話で卒業生のみさと、2年生のヒロ・沙英がヒロではなく沙英の部屋にいる描写からして、ひだまり荘の4人が集まる場所としてのヒロの部屋と、ヒロと沙英の2人の場所としての沙英の部屋みたいな棲み分けがあるのかもしれない。7話でみさとが訪れたのはヒロと沙英の2人だったからこそ、沙英の部屋を訪れたみたいな。

しかしながらそういうのは基本的な位置づけであって、上で見た9話の画像のように、4人が沙英の部屋に集まることもある。そういう一つの部屋が様々な色を見せる様子が面白い。

 

一つの同じ空間でも、人や状況によってどこに位置取るかというところで違いが出てくる。ひだまりスケッチ×365において、それが一番わかりやすいのが沙英の部屋なので、この記事でとりあげた。ヒロの部屋で食卓を囲んでいる描写は、4人の位置自体はころころ変わっているものの、そこに意味を見出すのは(私にとっては)ちょっと難しい。

一つのシーンを演出するために一つの場所を使うのではなく、複数のシーンに渡って部屋がさまざまに機能しているのが楽しい。

 

私はまだ2期までしか見ていないのでわからないが、沙英はひだまり荘を出るとき、さまざまなことを思い返すだろう。引っ越すまでの準備で、きっと沙英は自分の部屋でのこともたくさん思い出すことになる。たとえ作中で描写されなくても、行間として、そういうことを想定するのは不自然なことではない。

個々の描写のよさ・面白さは言うまでもないが、描写の積み重ねが、場所に対する思い入れを喚起する。そういう意味で、印象的なシーンが多い沙英の部屋における描写が私は好きだし、また、この部屋そのもののこともきっと私は気に入っているんだろうと思う。

 

*1:ひだまりスケッチ×365』2008,原作:蒼樹うめ,監督:新房昭之,制作:ひだまり荘管理組合,アニメーション制作:シャフト

*2:本文中で引用している画像はすべて『ひだまりスケッチ×365』からの引用

*3:8話では、ひだまり荘の4人が床に所在なく座っているシーンとかもある。テーブルは普段はしまってあるとかなんだろうか

*4:沙英は高校生にして作家という設定