日記:錠剤
昔から嚥下が苦手だった。具体的には、中学生くらいまで錠剤が飲めなかった。
錠剤の代わりに粉薬を処方してもらったり、砕いて飲んだりした。
ものによるが、口の中に錠剤をしばらくとどめておくと、苦味が出てくることがある。砕いた錠剤は、当然そういう苦味が最初からある。さらに言えば、砕いた錠剤は粉状になっていて飲みやすいが、しかし量は錠剤の状態と変わらない。だから子供のころは薬を飲むのにたいそう苦労した。それでいて体調はしょっちゅう崩した。薬に関する苦い記憶は今でも忘れられない悪夢だ。よく噛まずに食べものを飲み込んでしまう癖に、どうして錠剤が飲めないというのだろう。不思議なものである。
いつの間にか錠剤もすんなり飲めるようになった。
と、思っていたのだが、私は一つの錠剤を見つめながら文章を書いている。つまり、ここ二、三日で錠剤を飲み込むのが下手になっており、錠剤を口に入れることを恐怖している。
ここ数週間不調が続いていることも関係しているのだろうが、こんなことで手間取っている自分が情けない。
そういうわけで文章を書いて気分を紛らわせている。
ちょっと感じが変わるだけで簡単に飲めてしまったりするのだが、この感じが変わるということの実態が正確につかめない限りは、今後も苦労することになるかもしれない。