日記:ゲームにおける演出としての脱チップチューン

注意:音楽もゲームも素人の人間が突然意味もなくチップチューンについて語るだけの日記です。音楽について語りたいけど語れないので、ゲームを通じて語るしかない……。テクノとかもよくわかっていない……。

 

チップチューンというのはわかりやすく言えば、ファミコンゲームボーイのように音が制限されていた時代のゲーム音源を使った音楽を指すジャンルの名前だ。ピコピコ音なんて言ったりもする。*1

もちろん基本的には古いゲームで使われていた音なので、日本の最新のゲームにおいてチップチューンは主流とは言えない。でも個人制作のゲームや、ゲーム好き向けのゲームではBGMとして現役で使われていることも少なくない。わかりやすい魅力としては「そういうゲームをプレイしていた世代にとって懐かしい」というものがある。チップチューンが使われているゲームでは、これまたファミコンゲームボーイのころのゲーム画面において主流だったドット絵が使われていることが少なくない。*2ドット絵とチップチューンの相乗効果で、ファミコン風、ゲームボーイ風の世界観を構築しているのかもしれない。

で、ただゲーム全体にチップチューンを使って雰囲気を出すだけじゃなくて、演出の一部として使っているゲームがあるので、今日はそれについてちょっと書いていきたい。Tower of HeavenというゲームとUndertaleというゲームについて(ネタバレというほどでもないけど)一部演出についての言及があるので注意。それでもTower of Heavenはブラウザ上でプレイできる短いゲームなので、プレイしてから読んだほうがいい気もする。

askiisoft.com

 

まず、Tower of Heaven

音楽についてはここから試し聞きができる。

flashygoodness.bandcamp.com

このゲームも上で言った種のゲームと同じく、ゲームボーイ風のドット絵でつくられているアクションゲーム。いかにもレトロな画面となんとなく黄色っぽい色合いが郷愁をそそる。プレイすればわかると思うが、タイトル画面のテーマ(上のサントラでいうThe Lonely Tower)が何度もアレンジされた形で流れるのが特徴。ちょっと派手めな音楽もあるが、基本的には(たぶん)チップチューンゲームボーイで出ない音があったとしても、メインはゲームボーイ風の曲になっている。

で、この作品はエンディングにおいて「ゲームボーイ風のドット+チップチューン」の世界を抜け出す演出がある。それはエンディング曲で、イントロ部分だけはチップチューンだが、画面が暗転してカラフルに変わる演出とともにピアノの旋律が始まるのだ(上のサウンドトラックでいう「Atop the World」という曲だ)。逆に言えば、ここまでのBGMにピアノの旋律は存在しない。これは「ゲームボーイのゲーム」の再現というだけではなくて、「ゲームボーイ風の、しかしゲームボーイではないゲーム」だからこそできる演出である。チップチューン風のサウンドに限っていたからこそ、エンディングにおいてチップチューンではなくなる演出に開放感を覚えるのだろう。

 

Undertaleは有名なゲームなので知っている人も多いかもしれない。

store.steampowered.com

こちらもドットが特徴的なゲームだ。RPG。steamでも購入できるし、PS4やvitaでもやれるらしい。

amazonのページから各楽曲のサンプルが聞ける。

https://www.amazon.co.jp/Undertale-Soundtrack-Toby-Fox/dp/B01GGSLWRY

音楽をED以外チップチューンに限っていた天国の塔とは異なり、チップチューンっぽい曲もあれば、日本の最新のゲーム同様に様々な楽器を使った楽曲もある。チップチューンっぽい音と同時に楽器を使う曲もある。ファミコンっぽさ、ゲームボーイっぽさもありながら、それに縛られていないのがひとつの特徴かもしれない。

 

ただTower of Heavenに似た演出もすこしあって、それが「Nyeh heh heh」と「bonetrousle」だ。Nyeh heh hehは作中のあるキャラクターとの会話シーンで流れるチップチューンの楽曲であり、bonetrousleはそのキャラクターととうとう戦う場面で流れる楽器数の増えたNyeh heh hehのアレンジである。しかも、ただ戦闘シーンが開始するとともに流れ始めるのではないところがにくい。Undertaleはボス等との戦闘において普段と異なる、特殊なシステムが用いられることがあるのだが、戦闘システムが通常通りのシステムから特殊なシステムに切り替わった直後にbonetrousleが流れ始めるのだ。ここからが戦闘の本番と言えるので、まさしく盛り上げるにふさわしい箇所である。この演出も、ある種「チップチューンではなくなること」によって盛り上がる演出と言えるだろう。ゲームにおいて重要なタイミングでBGMが切り替わるのもポイント。

 

ここまで2つのゲームから、「チップチューンではなくなる」ことが演出として使われている例を取り上げた。1つは短編ゲームのエンディング、もう1つは長編ゲームにおけるあるキャラクターとの「接触→戦闘(の本番)」への切り替わり。これは割とあざとくて、何度やられてもきっとテンションがあがってしまう演出だろう。

 

ここからは蛇足。

ここまで書いてきたように「チップチューンでなくなる演出」はあざといくらいにテンションがあがるんだけど、一方でせっかくチップチューンを使っているのに、それが失われることを喜ぶというのもちょっと悲しい気がする。もちろんUndertaleは前述のように、チップチューンを用いながらチップチューンに縛られていないのが特徴だし、ゲーム音源らしい音と普通の音がかみ合った楽曲として「Asgore」や「Hopes and Dreams」が素晴らしいことは言うまでもない。「bonetrousle」だって正確にはチップチューン交じりの楽曲だし、チップチューン部分がかなりいい味を出している。わざわざ紹介しているのだから、ここで取り上げたどの楽曲も素晴らしいと感じて書いている。その上で、もっと何か、チップチューンの生かし方はまだまだあるのではないか、ということをちょっと期待しているに過ぎない。

 

今回触れた範囲でいうと、チップチューンを使う意義として「ファミコンゲームボーイ風の雰囲気を演出するため」というのが基本形で、「ファミコンゲームボーイ風を演出することで、『そうではなくなる』瞬間の価値を高める」というのが発展形。そしてファミコンゲームボーイは基本形の演出を素で満たしているけど、発展形の演出は絶対にできない。現代のゲームだからこそ発展形の脱チップチューン演出が可能になる。さらにその先にはどんな発展があるのだろうか。もしくは、既にそういう演出が存在していて、俺が知らないだけかもしれない。

 

音楽もゲームもつくらないので、俺がそういう演出をつくることはないと思うけれど、チップチューンの未来に勝手に期待しておきます。

 

参考サイト(というかほとんどの楽曲はこのサイトで知りました……)

Luna Ascension - みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki - アットウィキ

Atop the World - みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki - アットウィキ

Bonetrousle - みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki - アットウィキ

*1:厳密に言えば、音源を使っただけのものはチップチューンでないと見なす立場もある。ファミコンゲームボーイは同時に出せる音の数にも制限があるから、その制限を守っていないとチップチューンではない、という考え方だ。でも今回の話ではざっくり、ファミコンっぽい、ゲームボーイっぽい音を使った曲をチップチューンだと考えて構わない。その差についてはあまり言及しない。というか俺にはできない

*2:洞窟物語とかVVVVVVとか。リンクからダウンロード/購入できるが、リンク先とは別のハードでダウンロード販売していたりもするので興味があったら調べてほしい