日記:「ダンケルク」

見てきたぜIMAX

とにかく画面がでかい。ここまで大画面じゃ逆に画面が見渡せなくて、重要な部分を見落としてしまうんじゃないかというくらいにはでかい。これでも最大ではなくて、ダンケルクの映像を100パーセント見るには足りないタイプのIMAXというんだから恐ろしい。

舞台は第二次世界大戦、フランスが降伏する直前あたり、着々と侵攻するドイツにフランスの「ダンケルク」という港町に追い込まれて包囲されたイギリス軍。その、泥臭い、という言葉では済まない撤退戦を刻々と描いた映画となっている。

冒頭が好きだ。荒廃した、しかし美しい街並みのダンケルク。当て所なく歩く兵士たち。彼らのもとに、無数のビラが舞い落ちる。ビラに書いてあるのは、「包囲した、降伏せよ」という勧告。道端に転がるホースに口をつけて水を補給しようとする兵士もいる。そこから突発的に始まる銃撃戦。

無数になにかが舞い落ちる構図はそれだけで美しい。ずるい。しかし舞い落ちるビラは、その場を歩く兵士たちにとって残酷なもの。街並みも美しいなか、どこか荒廃している。市街地には不釣り合いな兵士の格好。美しさと絶望の同居が、絶望をより深いものとして描き出している。また銃撃戦のシーンは音響にこだわっているIMAXだと、実際に発砲があったかと疑うくらいには、むしろ実際の発砲はここまで恐ろしい音ではないだろうというくらいには迫力がある。

彼らの撤退戦はそこから海に舞台を移していくわけだが、この映画は決して取り残された兵士だけを描くものではない。兵士たちの一週間、彼らを救うために募集された民間船がダンケルクにたどり着くための一日、そして撤退戦を援護する戦闘機乗りの一時間。ここら辺は説明する気がないのでそこらへんの映画宣伝サイトとかで確認してほしい。

 総評としては、緊張感、緊迫感、息が詰まるような感じ。そういうものを描くのがとても上手な映画だった。ひたすら人の心を追い詰めるような音楽も、その助けをしている。3つの異なる時間を描く作品なのに、シーンが変わろうとも同じ音楽をそのまま流していてシームレスにつながっているのも印象的。初めての戦争映画みたいなところがあるので、他の戦争映画と比較してどうかは知らない。

一方、息が詰まるような緊迫感にもいろいろあって、静寂が似合うようなものもある。この映画ではそういう恐ろしさは少なかった。音響が派手だし。まぁ仮にも戦場なので、静かではないだろうけど。

ここからネタバレありで徒然と。(ここまではネタバレではなかったと言い張る)

DUNKIRK

DUNKIRK

 

 

 

戦闘機が飛ぶ空も美しかったな。

ただひたすら空が続いているということを美しく描けるのはすごいことだ。

でも、最初「敵は太陽からやって来る」みたいな台詞があったわりに、曇り空が混ざっているのはどうなんだろう。太陽から敵がやってくる理由は、青空においての唯一の遮蔽物が日光であるからだ。曇っていたら雲をうまく使うほうがいい。実写にこだわる監督らしいし、ここら辺は仕方ない部分なんだろうか。もしくは、海の天気は俺が知っているよりも変わりやすいのかもしれない。もし見当はずれな指摘なら申し訳ない。

 

ほとんど言葉を話さずに行われる兵士たちのやりとりがよかった。

その中で培われる友情みたいなもの。

と、思っていたら、お前フランス人だからしゃべってなかったのかよ。

「窮地で誰から救うか」という話になったときに、自国の人とか、そういう少しでもつながりのある人を優先してしまうのはある種仕方ないことだけど、個人のレベルでは恩人は大切だよね……。

船に次々と穴があいていくあのシーン、待ち焦がれていたはずの満ち潮が自分たちを追い詰めてゆく、正常な判断ができなくなっていく恐ろしさが伝わって来る。

 

この映画において、銃弾や爆撃の恐怖は海に対する恐怖と似ていて、つまりは自然や災害に対するものと似ている。

敵の姿は描かれない。無口な映画ということもあるだろうけど、ドイツをののしる描写さえほとんどない。淡々と逃げ、生き残ろうとする。

桟橋(堤防?)に対する爆撃も、爆撃の音より、飛行機が飛び去って行く音のほうが恐怖をそそる音で、それが印象的だった。「飛行機が飛び去る」という行為は悪意のあるものとは言えまい。爆撃のほうがよっぽど悪意がある。こういうところも、ある種災害のように恐怖を描いているのかなぁと。勝手に読み込みすぎかもしれないけど。

 

その後を考えるとなんとも言えないけど、海に取り残された軍人の様子もなんとなく美しさを感じてしまった。この映画は、戦場の恐ろしさを描いている一方で、いろいろなところに美しさがちりばめられている。冒頭しかり。

これを美しいと手放しに手を叩いていいのかよくわからない。きっと人は世界のあらゆるところに光を見いだせて、世界の一部分を構図として切り取る映画はそれのもっともたるところなんだけど、こと戦争ものからその光を見出してしまうのはどうなんだろう、という罪悪感がある。こういう不謹慎的な考え方はどうにも好きじゃないんだけど。

 

あ、1week、1day、1hourとかテロップ出してたけど、1weekはそこまで1weekじゃなかったような。時系列が収束するところで、「あれ、1weekってでも二日くらいしか経ってなくない???」と思ってしまった。作中で1weekを描くという意図ではないのかも。わからん。

 

こういうのを書いていくと、まだいろいろ書ききれていないんじゃないか、という気分になるけど、そもそも2時間近い映画について逐一思ったことをしっかり書くとすごい分量になると思うので、このくらいで。

多くの人が見ているのだから、俺がすべて語る必要もないだろうし。

みんなも見よう!(ネタバレを読んでいる人に言うセリフではない)

 

でも「あ、あれが書きたかったんだ」みたいなことをふと思い出すと悔しいんだよなぁ……。