詩:ぜんぶ私でした

ぜんぶ私でした。

ぐつぐつと煮えたぎる日光をいとおしいと感じながら走り回っていたのも、撫でるように包んでくれるうららかな陽光をうとましいと感じながら逃げ回っていたのも、ぜんぶ私でした。雨が降っているからという理由で、約束をすべて裏切って、飛び乗った電車で海まで行って帰ってこなかったのも私です。傘を持っていない少年に傘を差しだして、自分はずぶぬれになって帰ったのも私です。

友達の誕生日プレゼントを選ぶために、ひねもすショッピングモールで迷っていたのも私です。友達がもらった賞状を、第三準備室に隠したのも私です。私はあなたが好きでした。私はあなたが嫌いでした。あなたが貸してくれたCDの、二番目に入っていた静かな音楽は、今でもたまに聞くことがあります。

 

 

空をゆく鳥の群れに訳もなく喜ぶのも私でしょう。

同じ景色に、何も思わずただ目的地を目指すのも私でしょう。

どちらかがより中心的ということもなく、ただ頻度でそれに近しい結論を出すばかり。

私とあなたは明確に違うけど、あなたに比べて私が優等であるとか、私に比べてあなたが優等であるとか、そういう話は熱を出した日曜日の粉薬のように苦い。

月食は見ましたか。

あんなものつまらないと思うあなたも、それなのに日常の三日月が輝いて見えるあなたも、あなたなんだろうと思います。

先週のフリーマーケットで、薄汚れたボロボロの私を見かけました。

本棚の隅っこに飾るくらいならちょうどよいと買いました。