小説

日記:「文学少女対数学少女」

記号化された人物、人物の行動が構成する命題、その命題からなうる公理系、そこにいくつかの推論規則が加わって——それが推理小説――にして形式体系――にしてメタ数学だよ! (『文学少女対数学少女』loc.165 of 3860)*1 『雪が白いときかつそのときに限り』の…

日記:「名探偵木更津悠也」

敢えてストレートなタイトルにしたのは相応の理由があります。思うに『名探偵』とは、常に理想に近づこうとする強靭な意思を持った存在でなければなりません。その毅然たる姿勢が、喜んで記述者の立場に甘んじるワトソン役を産むのです。(後略) 香月実朝 (…

日記:「時計館の殺人」感想編

前に更新した推理編に続いて、最後まで読んだので感想編です。 日記:「時計館の殺人」推理編 - しゆろぐ 前回は既読者向けでしたが、この記事はネタバレなしの感想パートとネタバレありの感想パートに分かれています。 館シリーズだと、十角館はブログに感…

小説:ドラッグ&ドロップ

カプセルを齧ると、かるく一時間は飛ぶ。 めまいがする。吐きそうになるし、実際に吐いていることもある。一方で、極上の悦楽を感じる。まさしく世界と同化できる。体が全てと溶け合って、あふれる。そう、あふれる。あふれるという言葉が適切だ。僕がコップ…

小説:人形になりたい

熊のぬいぐるみはため息をつく。 「キミは人間だからそんなことが言えるんだ」 その瞳は、クレヨンで塗りつぶしたみたいな真っ黒い色をしている。きっとそれは、夢にあこがれる純粋な色じゃない。目のなかの白い部分をぐりぐりと黒く染めた、諦念のような色…